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今年は当たり年なのでしょうか。直撃されている地域の皆様、どうぞお気をお付けください。

台風といえばギリシャさんとこのテュポンで、テュポンといえばロマーノんち(シチリア)のエトナ山なんだぜ、と反射的に連想するここの管理人は結構ギリシャ神話オタクです。


以下、思いつきで書いた短文。ああ、しかし、やっぱりだんだん伸びてくる・・・。
フィンランドのネーミングセンスは破壊的ですよね。
あ、ちなみに、正しい意味でやまなしおちなし意味なしです。






 『君の名は』

「みなさんにはフィンランドって呼ばれてますけど、うちのひとたちは違う名前で呼んでくれるんですよ」
 初めて逢ったとき、彼は照れたように笑いながらそう言った。


「ほーら花たまご、とってこーい!」
「わん! わんわん!」
 庭から楽しそうに小犬と遊ぶフィンランドの声がした。窓から覗くと、彼はボールを持ってきた小犬を満面の笑みで抱き上げるところだった。
「よーし! 偉いなー花たまご!」
「わん!」
 スウェーデンは密かに30°ほど傾いた。
 何故花たまご。
 分からない。心底謎だ。一体どこをどうすればそんな名前を思いつくのか、真剣に理解できない。て言うか本当に名前なのかそれは。
 フィンランドが強硬に主張したため、物騒すぎる(しかも意味が分からない)前半部を削って承認した命名である。どうやらしっかりと定着したらしく、小犬は珍妙な名前で呼ばれて嬉しそうに返事している。
 犬の名前がどう考えてもおかしいことを除いて、とても微笑ましい光景だ。スウェーデンは眉間に皺が寄るのを自覚する。ああ、親友が遠い。
 これは嫉妬などというものではない、と思う。フィンランドの付けた名がもっと分かりやすく特別な愛情のこもったもの───ぶっちゃけ女の名前とか───であれば、自分ももっと単純に複雑な気持ちになれたのだろう。矛盾した表現だが。しかし、花たまごは無理だ。さほど単細胞な性格ではないつもりだが、花たまごに嫉妬できるほど複雑怪奇な精神構造は持ち合わせがない。何なんだ花たまごって。
「あっ、スーさん! 見てください、花たまごってすごく賢いんですよ! とってこいもすぐに憶えちゃいました!」
 視線に気付いたらしく、フィンランドが邪気の欠片もない笑顔で手を振った。
 そう、彼には全く他意はないのだろう。フィンランドは良い奴だ。可愛いアニマル・コンパニオンに悪意で奇っ怪な名前を付けて喜ぶような歪んだ趣味の持ち主ではないことは、自分が一番よく知っている。
 自分から見てどんなに不可解に思えるネーミングでも、彼にとってはそうではないのだ。「花たまご」だって、フィンランドの家では実はものすごく立派な意味を持っているのかもしれないではないか。想像も付かないが。血まみれとか特攻とかチーズとかいわしとか、他に挙げられた候補もいずれ劣らぬ奇天烈さだったが。思い出すだに自分を騙しきる自信が薄れていくが。
 ───いや、自分の常識に合わないからと言って否定してはいけない。世界は広く、しばしば要らんところで奥が深いのだ。たとえ親しい隣人といえど全く違う文化を持っていることは十分にあり得る。「異文化理解」と十回くらい唱えて無理矢理にでも納得してしまうのが大人の態度というものなのだ。多分おそらくきっと。
「ほら、スーさんもえらいえらいって。よかったなー花たまごー」
「わん!」
 スウェーデンはふと、フィンランドの本名を思い出した。かくも不可思議なネーミングセンスを持つ彼を自国語で呼ぶ、その名は───
「………スオミ」
 湖の国。
 まともだ。普通に美しい。国土の実に七割以上を森林と湖沼地帯が占めるこの国に、最も相応しい名だ。
 ………何故?
「え? スーさん?」
 呟いた声が聞こえたらしく、フィンランドが驚いたように振り向いた。
「スオミ……おめぇの名だべ?」
「そうですけど、改めて呼ばれるとちょっと照れますよー。ほら、ちょっとかっこつけすぎっていうか、気取りすぎてるでしょ?」
「…………」
 そうか?
「……ええ名だ」
「そうですか? ありがとうございます!」
 フィンランドは屈託無く笑う。
「そう言ってもらえると嬉しいです、やっぱり大事な名前ですから。スーさんの名前もかっこいいですよねー」
「わん」
 足下で小犬が吠える。フィンランドはしゃがみ込んでその背中を撫でた。
「ああほら、お前もいい名前だぞー。な、花たまご」
 そう言って立ち上がると、再び小犬と一緒に走り出す。スウェーデンは無言で彼らを見送った。
 犬は好きだ。それにあの小犬は実際に賢いし、とても可愛いと思う。フィンランドのことももちろん好きだ。だからこの状況には全く何の問題もない、はずだ。うん。そう思おう。
「よーし、もう一回とってこいやるぞー。次はこのフリスビーだからな、がんばれよ花たまごー」
「わん!」
 スウェーデンは45°ほど傾いた。

 だから………何故、花たまご?





 スウェーデン語でスウェーデンは「スヴェーリエ」。「スヴェーア族の国」の意。
 スオミって名前は本当に美しいと思うのですよ。こんな綺麗な名前も付けられるのに、フィンランドって……(笑)
 本当にどこから来たんだ、花たまごって。
 
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